アセットマネジメント

米国における大学の資産運用戦略にみるアセットオーナーの運用高度化の先進事例

岡田 功太、船津 太佑

要約

  1. 現在の日本においては、アセットオーナーや資産運用会社の運用高度化が求められている。岸田文雄首相は2023年4月に、日本が国際金融センターとして発展していくには資産運用業等を抜本的に改革する必要があると言明した。また、金融庁は、「資産運用業高度化プログレスレポート2023」において、貯蓄から資産形成に向けた制度整備を進めるにあたって、日本のアセットオーナー及び資産運用会社等による運用高度化が必要であるとした。
  2. 米国の大学は、50年以上前から資産運用に積極的に取り組んでいる。米国の大学で最大級の運用資産総額を誇るハーバード大学、イェール大学、テキサス大学・テキサスA&M大学投資会社(UTIMCO)は、伝統的資産やオルタナティブ・ファンドに分散投資し、運用成果の一部を、学生への経済的支援、学術プログラムの運営、優秀な人材の獲得等に充てている。
  3. 日本の大学においても、資産運用に積極的に取り組み、教育研究活動に必要な財政的資源を強化することで、日本の科学技術開発力・イノベーション創出力の向上を促すことも検討に値しよう。アセットオーナーとしての大学が運用力を向上させることで、資産運用会社をはじめとするインベストメント・チェーンの機能強化を通じた金融・資本市場の更なる活性化を促すことができるのではないだろうか。