アセットマネジメント

米国における公益法人の資産運用戦略
-美術館・博物館等による文化・アート振興-

岡田 功太、船津 太佑

要約

  1. 岸田政権は2023年6月に、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)において、文化芸術資源の国内外への発信強化等は経済成長に寄与するものであるとした。また、新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議は、文化・アート振興を牽引してきた公益法人の改革活動をより一層活性化させるべく、株式投資等の資産運用の促進を図る方向性を示した。
  2. 米国の美術館・博物館等は、17年以上前から資産運用に積極的に取り組んでいる。米国の著名な公益法人であるメトロポリタン美術館、スミソニアン機構(スミソニアン博物館)、ニューヨーク公共図書館、トリニティ・ウォール街教会は、伝統的資産やオルタナティブ・ファンドに分散投資し、運用成果の一部を、文化・アート振興や文化財の有効活用に充てている。その際、依拠しているのが「公益団体の慎重なファンド管理に関する統一州法(UPMIFA)」である。
  3. 今後、日本の美術館・博物館等は、日本のソフトパワーの源泉ともいえる文化資源やアート作品をより一層拡充するために、財政的資源を確保すべく、資産運用を積極的に行っていく必要があろう。日本においても、UPMIFAのような制度を整備することで、美術館・博物館等による分散投資の促進を通じて、資産運用の活発化を図ることができるのではないだろうか。