特集:金融商品の新たなフロンティア

投資対象としての音楽著作権
-ストリーミングがもたらす金融商品としての魅力-

竹下 智

要約

  1. 世界の録音音楽市場は2014年を底に7年連続でプラス成長を続けている。Spotifyに代表されるストリーミングサービスは、海賊版(違法音楽データ)の利用を減少させ、音楽コンテンツの消費手段を大きく変えることで市場の再生に貢献したと言える。
  2. ストリーミングの普及は、投資対象としての音楽著作権に革命的な変化をもたらしている。第1に、過去に発売された楽曲からの収益など新たな収益機会の獲得可能性である。第2に、楽曲毎の視聴データの分析により、投資家の収益予測が立てやすくなったことである。音楽著作権への投資は、楽曲の視聴は景気に左右されにくく、安定的な収益を生む一方で、時には再生回数が上振れすることがあるため、アップサイドの投資リターンが期待できるアセットクラスとして認識されるようになった。
  3. 大手レコード会社が重要なプレーヤーとして大物アーティストの著作権を高額で購入するケースが増えている一方で、音楽出版社と投資ファンドが連携して音楽著作権を投資対象とするファンドの組成を行うことにより、投資家層は多様化している。また、著作権管理と収益向上への取り組みが改善するとともに、著作権を売買するオンラインプラットフォームが登場するなど、金融の知見によって市場全体が活性化していると言えよう。
  4. 日本でも、音楽業界に詳しい専門家と投資ファンドが組むことにより、投資資金を導入し、国内音楽業界の活性化や海外からの収益獲得につなげることが出来るのではないだろうか。