アセットマネジメント

多様な投資戦略を採用する米国ファミリー・オフィス
-オルタナティブ投資及びインパクト投資の活性化-

岡田 功太、船津 太佑

要約

  1. 近年、米国の金融・資本市場においてファミリー・オフィスが注目を集めている。米国のファミリー・オフィスは、富裕層個人及びその配偶者などの資産(信託・慈善財団・企業を含む)の管理や証券投資を行うために設立された法人であり、シングル・ファミリー・オフィスとマルチ・ファミリー・オフィスに大別される。
  2. シングル・ファミリー・オフィスは、単一の富裕層個人及びその配偶者等の資産を管理・運用する法人であり、米国証券取引委員会(SEC)が定める一定の要件を満たした場合には、投資顧問規制の適用が免除される。ベゾス・エクスペディションズやソロス・ファンド・マネジメントなどのシングル・ファミリー・オフィスは、富裕層個人の哲学や思想と合致する非上場企業に投資し、経済的リターン及び社会的インパクトの両立を目指す傾向にある。
  3. 他方で、マルチ・ファミリー・オフィスは、複数の富裕層個人ないしそのファミリー等の資産に係る投資助言を行うため、運用資産総額の増加を目指すことができるが、SECに投資顧問業者として登録する必要がある。アイコニック・キャピタルやMSDパートナーズなどのマルチ・ファミリー・オフィスは、オルタナティブ投資を主体とする資産運用会社として成長を目指している。
  4. 足元、日本においては、インパクト投資の活発化、非上場市場の活性化、資産運用の高度化などが求められている。日本のファミリー・オフィス業界の活性化を促すことによって、富裕層個人が有する資産の拡大及び社会課題解決の促進、ひいては日本の金融・資本市場における更なるダイナミズムの創出に繋がるのではないだろうか。