金融イノベーション

銀行と決済のアンバンドリング
-担い手はノンバンクかリテールCBDCか-

淵田 康之

要約

  1. わが国では、ノンバンクの決済業者にとって、追い風となるような制度改革が進展しつつある。2022年9月には、資金移動業者がわが国の銀行間決済システムである全銀システムに参加することが認められた。日本銀行の当座預金口座における清算も選択できる。2023年4月からは、資金移動業者を通じた賃金支払いも実現可能となる。
  2. 英国は日本に先駆け、銀行がほぼ独占的に提供してきた決済業務に、ノンバンクの参入を促し、競争とイノベーションの促進を目指す政策を展開してきた。2018年にはTransferWise(現Wise)が、英国のノンバンクの決済業者として初めてイングランド銀行への口座開設を認められ、銀行間決済システムの参加者となった。
  3. これに対し、ノンバンクによる決済サービスに慎重な立場もある。米国の連邦準備銀行は、ノンバンクによる口座開設を認めていない。ノンバンクによるステーブルコイン発行に関しては、日英も含め、各国は厳格に対応しつつある。ステーブルコインの広範な普及がもたらすリスクや、決済を通じた巨大IT企業の影響力拡大への懸念から、リテールCBDC(Central Bank Digital Currency)の検討も進んでいる。
  4. 銀行が預貸業務と一体で決済サービスを提供してきた時代から、決済のアンバンドリングが生ずる時代となっているのは確かである。この場合、今後の決済の担い手としてノンバンクをより重視するのか、それともリテールCBDCを導入し、国家の直接的コミットを重視するのか、各国の選択が問われている。