ESG/SDGs

ブルーファイナンスを促進するブルーボンド実務者ガイドと日本の課題

江夏 あかね、門倉 朋美

要約

  1. 世界有数の海洋国家である日本において、経済社会全体が持続可能な発展を遂げるに当たってサステナブル・ブルーエコノミー(SBE)がカギを握る可能性があり、それを支えるためのブルーファイナンスは重要である。一般に、ブルーファイナンスとは、SBEの実現に向けて必要な資金を金融資本市場から調達することを指す。
  2. ブルーファイナンスをめぐっては、2010年代後半頃から国際機関による原則・ガイドラインの発出や起債事例の蓄積が見られてきた。2023年9月には、国際資本市場協会(ICMA)を含む5つの国際的な機関が、「持続可能なブルーエコノミーの資金調達のための債券に関する実務者ガイド」(実務者ガイド)を公表した。
  3. 実務者ガイドは、ブルーボンドをグリーンボンドの一部として位置付け、8つのプロジェクト・カテゴリーを提示している。現時点のブルーボンドの発行額はグリーンボンドに比して少ない。しかしながら、実務者ガイドを通じて世界の金融資本市場におけるブルーボンドの共通認識が醸成され、同ガイドに基づく事例が蓄積されることを通じて、金融資本市場への同金融商品の浸透が徐々に進んでいくと予想される。
  4. ブルーボンドを含めたブルーファイナンスが日本で発展していくための課題としては、(1)サステナブルファイナンス支援策拡充の一環でのブルーファイナンスへの波及、(2)ブルーファイナンス関連金融商品の多様化、(3)SBE実現に向けた包括的な「ブルー・リスキリング」の推進、が挙げられる。