ESG/SDGs

企業のサイバーセキュリティリスクとサイバー保険

富永 健司

要約

  1. 近年、社会のデジタル化の進展等を背景として、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)との融合が進む中、サイバー空間におけるセキュリティリスクが高まっている。金融を通じたサイバーセキュリティリスクへの対応策としてサイバー保険が挙げられる。
  2. 保険監督者国際機構(IAIS)の調査によれば、現状、サイバー保険の元受収入保険料の国・地域別シェア(2020年時点)は、米国が53%と最も高く、次いで英国が34%となっている一方、日本のシェアは3%と相対的に低水準となっている。日本損害保険協会の調査においても、サイバー保険に加入していると回答した国内企業は調査対象の7.8%に留まっており、国内でサイバー保険の普及に向けてさらに取り組みを推進する余地があることが示唆される。
  3. 国内上場企業等のサイバーセキュリティ関連事故は、多種多様な業種の企業において発生しており、同事故が発生した後の資金面の備えを提供するサイバー保険の必要性は総じて高いと推察される。
  4. サイバー保険の普及に向けた主な課題として、(1)企業のサイバーセキュリティに対する意識及びサイバー保険の認知度向上、(2)企業によるサイバーセキュリティ対策のさらなる強化、(3)損害保険会社におけるサイバー保険ビジネスの持続可能性向上、が挙げられる。日本及び世界において企業に対するサイバー保険のさらなる普及と共に、サイバーセキュリティリスクへの対応の進展が注目される。