ESG/SDGs

日本のCG改革の示唆となる英国CGコード改訂
-方向は異なるがともに取締役会の機能強化を重視-

西山 賢吾

要約

  1. 英国ではコーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)の改訂作業が進められている。2023年9月23日までパブリック・コンサルテーション(意見募集)を行った後に内容を再検討して年内に改訂の最終版を公表し、2025年1月1日から適用開始の予定である。
  2. コードの構成変更など大規模な改訂であった前回(2018年)と比べると、今回の改訂は相対的に小規模で、リスクマネジメントや内部統制といった企業の不正、不祥事への対応が中心である。例えば、取締役会がリスクマネジメントと内部統制の効果的なフレームワークの構築だけではなくその維持にも責任を持つことや、報告期間中にそれらが効果的に機能していたかどうか説明することが求められる。
  3. また、ガバナンス活動についてアウトカムベースでの報告や、コードを順守しない場合の高品質な説明の要請、取締役の兼任(いわゆるオーバーボーディング)状況や、各取締役が十分な時間を当該企業に費やしているかの報告を求めることも提案されている。
  4. 英国のCGコードは、企業の財務報告に対する不透明性、不信へ対応するための取締役会の役割・責任に焦点を当てて制定、改訂が行われている。一方、日本のCGコードは成長戦略の一環として企業価値向上に向けた取締役会の役割に焦点が当てられており、方向性が異なる。しかし、基本的な原則の遵守やコードに対する実施状況(あるいは不順守)に対する高品質な説明を求める点やオーバーボーディング問題への対応などは、日本のコーポレートガバナンスの質的向上の観点からも示唆的と言える。