ESG/SDGs

我が国上場企業の株式持ち合い比率(2022年度)
-サステナビリティの観点からも持ち合い解消が注目される可能性-

西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所で算出した2022年度の「株式持ち合い比率」は前年度比で4年連続低下し、過去最低水準を更新した。保有主体別にみると、損害保険会社は前年度比横ばいであったが、上場事業法人、上場銀行、生命保険会社は低下した。特に上場事業法人は前年度に比べ0.5ポイント低下し、最大の保有比率低下主体となった。
  2. 株式持ち合い解消、政策保有株式圧縮を促したと考えられる理由としては、合理性の観点から保有株式の見直しが続いているのに加え、取締役選任議案に政策保有株式の保有量に関する基準を取り入れる動きが機関投資家の間で進んだことが挙げられる。実際に、2023年6月株主総会において、機関投資家の設定する保有株式の数値基準を上回る企業の経営トップ(会長、社長など)の取締役選任議案の賛成率が60%台、70%台となった事例が見られた。
  3. 今回の結果は、従来からの「緩やかな持ち合い解消、政策保有株式圧縮の継続」という見方を変えるものではない。今後持ち合い解消、政策保有株式の圧縮を一段と推進させる要因として、(1)2023年6月株主総会において、実際に政策保有株式を多く持つ企業の経営トップの取締役選任議案が厳しい結果となったことや、(2)株式保有構造上の政策保有(安定)株主の減少、また、政策保有株主に対する株式保有の合理性への説明責任や議決権行使が求められる方向になってきたことなどが挙げられる。さらに、(3)環境関連などサステナビリティの観点からも政策保有株式に対する注目を集める可能性が考えられるようになってきたことにも併せて注目したい。