時流

気候変動に対する中央銀行・金融規制当局の対応

慶應義塾大学総合政策学部 教授 白井 さゆり

要約

近年、気候変動がマクロ経済や金融システムに影響を及ぼすことへの理解が世界で進みつつある。これを受けて、世界の多くの中央銀行も急ピッチで対応を進めている。現時点では、主に金融システムに対するマクロプルーデンス政策を通じて監督体制を構築しつつあり、主要な銀行など金融機関に対して(金融規制当局と協力しつつ)気候シナリオ分析を実践する中央銀行が増えている。物価安定を目的として実施する金融政策を通じても気候変動への対応を進める中央銀行も少しずつ増えている。本稿では、バーゼル3合意にもとづく自己資本規制を含めてそうした最近の議論や現状と課題について展望する。