特別寄稿
『気候関連の機会における開示・評価の基本指針』の論点と展望
-GX経営の促進に向けて-
野村ホールディングス サステナビリティ企画部 VP 濟木 ゆかり
要約
- 2022年2月に経済産業省が提唱した「GXリーグ基本構想」には670社以上の企業が賛同を表明し、グリーントランスフォーメーション(GX)への高い関心が示された。2022年度はGXリーグにおいて3つの取り組み(未来社会像対話〔GXスタジオ〕、市場ルール形成、自主的な排出量取引)が行われた。
- 市場ルール形成に向けた取り組みの一環として、脱炭素社会の実現に向けて企業が有する「気候関連の機会」が適切に評価される仕組みを構築することを目的として、事務局である経済産業省主導のもと、2022年9月に79社(リーダー企業6社、メンバー企業73社)によって、GX経営促進ワーキング・グループが設立された。
- GX経営促進ワーキング・グループでは、気候関連の機会について約半年間にわたり議論を重ね、国内外の投資家等による企業評価への浸透を目指して「気候関連の機会における開示・評価の基本指針」(以下、基本指針)を2023年3月に取りまとめた。
- 基本指針では、気候関連の機会を、社会へのインパクトの創出を通じてもたらされる企業価値の向上につながる要因として定義するとともに、国際的にも注目が高まっている削減貢献量については気候関連の機会を表す項目の一例として取り上げ、推奨される開示内容を整理している。
- 基本指針の発行は、機会を開示・評価するためのルール形成に向けたファーストステップと位置付けられる。削減貢献量をはじめとする気候関連の機会については、本指針を国内外に効果的に発信するとともに、今後も継続した議論が期待される。