特集2:非財務情報開示の進展

企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正
-サステナビリティに関する企業の取組の開示-

板津 直孝

要約

  1. 金融庁は、2023年1月、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を改正した。同改正では、「サステナビリティに関する企業の取組の開示」などに関して、有価証券報告書及び有価証券届出書での記載事項について定めている。
  2. 欧米で優先して開示が要請される気候関連情報については、内閣府令等ではテーマ別開示要件としての定めがなく、トランジション・ファイナンスを強固に後押しするには不十分な開示内容となっている。岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けた、人的資本等の開示に焦点を当てているが、女性活躍推進法等に基づき具体的に示された指標は、サステナビリティに関する記載欄での実績値の開示が求められず、従業員の状況での開示となっており、サステナビリティ課題としての位置付けが不明確であると言える。
  3. 金融機関や金融監督当局が重視する温室効果ガス(GHG)排出量の指標については、内閣府令等では義務的な開示を見送り、重要性の判断を前提としつつ、積極的に開示することが期待される旨を記述するのに留めている。投資先からのGHG排出量は、金融機関にとって気候関連のリスクへのエクスポージャーを評価するための重要な指標であり、金融監督当局としても、気候変動から生じる金融システムへのリスクを監視、管理、軽減するために、重視している指標である。
  4. 相当程度多いGHGを排出する企業においては、気候関連のリスク及び機会が中長期的に企業の持続可能性や財務的価値に影響する可能性が高いことから、自社のGHG排出量について詳細に理解した上で、効果的な企業の気候変動戦略を策定し、有価証券報告書等で積極的に情報開示することが重要であると言える。