ESG/SDGs

大量保有報告制度の見直しが始まる
-ガバナンス改革「残された課題」への取り組み-

西山 賢吾

要約

  1. 2023年3月2日、金融担当大臣より金融審議会に対し、「近時の資本市場における環境変化を踏まえ、市場の透明性・公正性の確保や、企業と投資家との間の建設的な対話の促進等の観点から、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方について検討を行うこと」が諮問された。
  2. 諮問を受けての主な検討内容としては、公開買付の実施が義務づけられる買い付けを市場内、市場外を問わず株券等保有割合の3分の1超とすることや、全部買付義務のある公開買付の閾値(現在は株券等所有割合の3分の2以上)の見直し(引き下げ)、大量保有報告制度における「特例報告制度」の適用範囲や「共同保有者」の対象範囲の明確化、などが挙げられる。
  3. 今回の諮問を受け、金融審議会内にワーキンググループなどの会議体が設置されて検討、審議を行い、対象となる金融商品取引法等の改正案を提言する形で答申が行われた後、国会で改正に関する法案審議等がなされるものとみられる。
  4. 今回の諮問内容は、日本のコーポレートガバナンス改革における「残された課題」への取り組みともいうべきものと考えられる。特に大量保有報告制度における「特例報告制度」の適用範囲や「共同保有者」の対象範囲の明確化については、機関投資家が今後協働エンゲージメントを積極化していく上でも重要と考えられ、金融審議会での議論の行方が注目される。