ESG/SDGs

2023年6月株主総会の注目点
-「資本効率性向上」への関心回帰とガバナンス改革の実質化-

西山 賢吾

要約

  1. 機関投資家の議決権行使基準の改定内容などから考えると、2023年6月を中心とした今後開催の株主総会においては、取締役会の監督機能を高めるための社外取締役の増員と、取締役会の多様性の観点からの女性役員の設置が注目される。最近の株主総会の結果から見ると、これらへの対応は経営トップの取締役選任議案賛成率にも影響を与えている。
  2. 2023年6月開催の株主総会でも上程が見込まれる環境関連の株主提案については、地政学リスクや資源価格の高騰などを背景に、投資収益の獲得を相対的に重視する投資家、株主と、環境保護の重要性を強く意識する環境関連団体(株主提案者)との見解の違いが現れてきた印象もあるため、どの程度の賛同を集めるかが注目される。
  3. 新型コロナウイルス感染症拡大の企業活動への影響が小さくなるとともに、投資家の関心は企業の資本効率性や収益性の改善、向上へ回帰してきた。こうした中で、金融庁はコーポレートガバナンス改革実質化への課題、それらへの対応、施策をまとめたアクションプログラムの策定を打ち出した。また、日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの改訂の検討も、今後は改革の進捗状況を踏まえて適時実施される方向である。
  4. 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」は、特にPBR(株価純資産倍率)の継続的1倍割れ企業に対して状況改善に向けた対応を促すと見られ、コーポレートガバナンス改革の実質化を促す施策の1つとして注目される。
  5. 株主総会での会社側議案の否決が「異例」ではなくなる中で、企業は気候関連リスクへの取り組みとともに、中長期的、持続的な企業価値向上へも積極的に取り組み、それらに対する開示や説明を拡充させて投資家、株主との相互理解を深めることがさらに重要となる。