ESG/SDGs
中国とEUのコモン・グラウンド・タクソノミーの概要
宋 良也
要約
- サステナブル・ファイナンスに関する国際的な連携・協調を図るプラットフォーム(IPSF)は2021年11月に、欧州連合(EU)と中国の「コモン・グラウンド・タクソノミー(CGT)」を公表した。世界的にESG(環境・社会・ガバナンス)関連規則の制定が議論される中、異なる法域間における統一された分類体系(タクソノミー)の共通点を見出すCGTは、改めて注目に値するものと言える。
- CGTの背景にあるのは、EUで2020年6月に導入された「EUタクソノミー規則」と中国で2021年4月に公表された「グリーンボンド支援プロジェクト目録(2021年版)」(中国タクソノミー)である。これらは、環境配慮を装った「グリーンウォッシング」行為の防止や、真の持続可能な経済活動に資本の流れを転換させることを狙いとしている。
- CGTは、EUと中国のタクソノミーを比較・分析し、両者の共通点をまとめている。これにより、金融機関・投資家がCGTに準拠する持続可能な経済活動に投融資する際に、調査等のコストを削減できるようになることが期待されている。既に、中国建設銀行や中国銀行等による、CGTに準拠したグリーンボンドの発行事例がある。
- IPSFは今後、EUと中国以外の国・地域のタクソノミーをCGTに盛り込んでいくことを予定している。その範囲が広がっていけば、CGTは、持続可能な経済活動に関するグローバル・スタンダードとなり得る。今後、CGTがどのように更新されていくのか、また、それが各国のタクソノミー策定にどのように影響していくのか、注目に値しよう。