特集1:非財務情報開示の展開

開示枠組の全体像が示されたTNFDベータ版の集大成v0.4
-グローバル生物多様性枠組との関連性が明示されたコア開示指標-

林 宏美

要約

  1. 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、2023年3月28日、第四弾でベータ版の集大成であるv0.4を公表した。2023年6月1日までのパブリックコメント期間を経て、2023年9月には開示枠組の最終版(v1.0)が公表される予定である。v0.4では、TNFD開示推奨項目や自然関連リスクと機会の評価をするLEAPアプローチのスコーピング等が改訂されたほか、新たにコア・グローバル開示指標案やシナリオ分析のプロセス等が示された。
  2. TNFDの開示枠組は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と平仄を合わせている。TNFD提言が、ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、指標と目標というTCFDとほぼ同じ4つの柱で構成されているうえ、14の推奨開示項目には、自然資本の観点に置き換えたTCFD推奨の全11項目が含まれている。自然資本特有の開示項目としては、自然関連課題を検討するうえで優先度の高い場所等の記述、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメントに関する記述等がある。
  3. コア・グローバル開示指標としては、自然への依存度やインパクトに関する開示指標10項目と、リスクおよび機会に関するコア開示指標5項目が示された。前者は、2022年12月に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の目標に関連付けられている。
  4. TNFDは、市場参加者が気候変動、自然資本の両分野を統合したサステナビリティ開示の枠組構築を目指すことを勧告しており、両者の関連付けに関するガイダンス開発も今後の重要な課題としている。53か国、400超の企業や金融機関が、生物多様性へのインパクトや依存度、リスク等の開示義務化を求める動きもあり、開示の動きが加速する可能性もある。