特集3:海洋経済の論点

国家・地域戦略としてのブルーエコノミーの展開
-日本、セーシェル及びEUの事例-

門倉 朋美、江夏 あかね

要約

  1. 21世紀に入った頃から、海洋資源の持続的な利用を通じて海洋環境を保全しながら経済発展を目指す「ブルーエコノミー」という考え方が注目を集めている。
  2. 日本は、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積(海外領土を除く)が世界第6位の約447万平方キロメートルを有する海洋国家であり、日本経済、社会全体が持続的発展を遂げるに当たってブルーエコノミーの発展がカギを握る可能性がある。ブルーエコノミーの発展に際しては、ファイナンス面も含めた対応も不可欠である。
  3. 本稿では、ファイナンスに関する面も含めて国家・地域として戦略的な政策を講じているケースとして、日本と共に、セーシェル及び欧州連合(EU)を取り上げた。セーシェルではブルーエコノミーに関連する課題に取り組むべくロードマップを策定し、ブルーボンド等を海洋保護活動の資金調達手段として活用している。EUでは持続可能なブルーエコノミーの発展のための新たなアプローチを提案し、中小企業等を支援する「ブルーインベスト」を推進している。
  4. セーシェル及びEUの事例を踏まえると、日本のブルーエコノミーの発展に向けた今後の主な論点としては、(1)ブルーファイナンスの推進、(2)中小企業やスタートアップ企業の支援、が挙げられる。
  5. 特に、日本におけるブルーファイナンスは、グリーンファイナンス等と比較すると初期段階とも言える。例えば、ブルーファイナンス市場の育成に向けて、政府がこれまで実施してきたグリーンファイナンスやトランジション・ファイナンス等への支援策等も参考に、仕組みを検討をすることも意義があると考えられる。