ESG/SDGs

ESG投信の金融商品取引業者等向け監督指針の改正
-日米欧のファンドのESGウォッシュ規制動向-

板津 直孝

要約

  1. 金融庁は、2023年3月、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」を改正し、ESG(環境、社会、ガバナンス)関連投資信託の範囲を定めるとともに、ESG投信の情報開示や投資信託委託会社の態勢整備について、具体的な検証項目を定めた。ESGウォッシュが以前より懸念されていた上に、各国の規制当局が罰則を科す事例も発生していることが背景にある。
  2. 欧州連合(EU)では、2019年12月、金融サービスセクターにおける「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」が採択され、2022年11月には、ESGウォッシュの懸念を解消するために、ESGファンド名のガイドラインに関する協議書が公表された。米国では、2022年5月、ファンド及び投資顧問会社のESG情報開示に関する規則の改正案に加えて、ファンドの「名称規則」の改正案が公表され、EUと同様にファンドに組み込むESG要因に定量的な閾値が設定された。
  3. ESGウォッシュの懸念に対しては、ESG投信の定義の明確化と投資家に対する情報開示の充実が重要となる。ESG投信の定義の明確化を図る手段の1つには、欧米で整備が進められているファンドに対する名称規則がある。ESG投信の情報開示の充実では、投資の意思決定に有用な情報が投資家に提供され、ESG要因の考慮の幅が明確になる。
  4. 金融庁の監督指針では、定量的な閾値を設けるよりも、ESG投信の情報開示を充実させ、ファンドの実態を把握できるようにすることを優先している。しかし、ESGウォッシュの懸念を解消するためには、ESGウォッシュ規制に加えて、投資先に対するESG情報開示の促進を優先させることが欠かせないと言える。