ESG/SDGs

さらなる削減が進む政策保有株式
-「過大な政策株式保有」に対する投資家の厳しい「眼」を反映-

西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所が計算した、投資収益の獲得を株式保有の主目的とする純投資家の株式保有比率は、2021年度の68.0%から2022年度68.7%に上昇する一方、取引関係等の構築を主目的とする政策保有投資家の保有比率は32.0%から31.3%に低下した。3月が本決算期であるRussell/Nomura Large Cap構成企業の政策保有株式純減幅も2021年度に比べ2022年度は拡大しており、株式持ち合い解消、政策保有株式の削減は一段と進行した。
  2. 議決権行使助言会社や国内外機関投資家において、政策保有株式の保有量が「過大」なものであるかを判断する「数値基準」、すなわち「閾値」を設け、該当する企業の経営トップの取締役選任議案に反対する動きが進み、賛成率が60%台や70%台となった事例が見られた。投資家の厳しい「眼」も政策保有株式の削減につながっている。
  3. 株式持ち合い解消の進行と、コーポレートガバナンス改革が日本の成長戦略の中心に据えられたことにより、日本の上場企業の株主構成が変化するとともに、企業経営陣に対し「健全なリスクテイク」を促すことが投資家・株主の重要な役割となった。こうした中、企業側では、ディスクロージャー(情報開示)とアカウンタビリティ(説明責任)を重視しつつ、投資家・株主とのコミュニケーション、相互理解を深めていくことが肝要である。
  4. 現下の政策保有株式を巡る状況を考えると、投資家の政策保有株式に対する見方はさらに厳しくなっている。望ましい政策保有株式の水準に関する統一的な見解はないものの、少なくとも政策保有株式の保有合理性を不断に検証し、保有合理性が薄れて説明がつかなくなった企業の株式は確実に削減の対象になるであろう。このため、政策保有株式の削減は今後も続くと考えられる。