ESG/SDGs

サステナブル投資は「量」から「多様化」、「質」への転換期に
-日本のサステナブル投資残高(2022年)-

西山 賢吾

要約

  1. NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が公表した2022年の日本のサステナブル投資残高は493.6兆円となり、前年に比べ4.0%減少した。一部の機関がアンケートへの回答を控えたという事情はあるものの、これまで順調だったサステナブル投資の成長に一服感が出てきた可能性も考えられる。
  2. 運用手法別にみると、ESGエンゲージメントや議決権行使などの残高が減少する一方、国際規範に基づくスクリーニングや、規模は小さいもののサステナビリティ・テーマ型投資の残高は拡大した。また、運用資産別にみると、株式や債券は減少したものの、プライベートエクイティや不動産などが拡大した。
  3. 今回の結果や、日・米・欧におけるサステナブル投資を巡る情報開示や規制などの動向を考慮すると、サステナブル投資の注目点は投資残高といった「量」から、運用手法、運用資産の「多様化」、そして生成される金融商品や運用対象資産等がサステナビリティ(持続可能性)に十分貢献しているかという「質」の向上へと移行していると考えられる。これまで以上に多様な手法を開発、利用し、発行者(資金調達者)側、投資家側双方の満足度が高く、かつ見せかけだけの「グリーンウオッシュ」ではない、品質の高いサステナブル投資の運用体制やサステナブル投資関連の金融商品に対するニーズが一段と高まろう。