ESG/SDGs

EVシフトをテコに日本を追い上げる中国の自動車産業
-注目すべき新興民営企業の台頭と生産のモジュール化-

関 志雄

要約

  1. 中国は、電気自動車(EV)へのシフトをテコに自動車大国から自動車強国に向けて邁進している。その背景には、環境保全を目指した政府の支援策に加え、技術革新とコスト低減、サプライチェーンの整備などがある。中国はすでに世界最大のEVの生産国と市場としての地位を確立しており、EVの輸出拡大をテコに、日本を抜いて世界一の自動車輸出大国になった。
  2. 長い間、中国の自動車市場では、外資との合弁企業で生産され、外国ブランドで販売されるものが中心であったが、ここに来て、中国ブランドの台頭が目立っている。その担い手は、BYDをはじめとした新興民営企業である。彼らは、バッテリー技術、電動駆動システム、スマートモビリティなどにおいて、優れた技術を持っている。これらの強みが発揮される形で、中国製のEVは、航続距離、充電速度、自動運転などの面において、国際競争力を持つようになってきた。
  3. EVシフトが進む中で、自動車産業は、日本が得意とする擦り合わせ型から中国が優位に立つモジュール型に変わりつつある。このことは、自動車産業において、中国にとって日本を追い上げる絶好のチャンスが到来する一方で、日本にとって強い競争相手が現れることを意味する。