時流

ルールを編み出すEUと気候変動対策

関西大学 商学部 教授 高屋 定美

要約

欧州連合(EU)加盟国は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、エネルギー問題が一挙に吹き出している。それまでEUは欧州グリーンディールを軸に新型コロナ感染拡大からの経済回復が期待されていた。侵攻後、EUでの従来のエネルギーへの依存を低めることが優先課題となってはいるものの、移行期のエネルギーをどのように調達するのかが最優先課題でもある。はたしてEUの脱炭素社会への移行という壮大な構想が今後、実現可能となるのか、2023年はその岐路と位置づけられる。また、EUは気候変動対策においてルールメイカーとしての役割を担おうとしているものの、原子力や天然ガスをブラウン産業としなかったことが、このルールへの信頼を揺るがしかねない。今後、この信頼が維持されるのか注視する必要がある。