特集2:米国におけるESGの潮流

米国年金プランのESG投資を巡る政策
-ESGファンド事業に伴う政治的リスクの増大-

岡田 功太、中村 美江奈

要約

  1. 近年、米国では、年金プランによるESG(環境、社会、ガバナンス)投資に係る政策に注目が集まっている。連邦レベルでは、米労働省が企業年金プランによるESGファンド投資の促進を目的とした規則(ESG投資規則)を策定した。しかし、米国では、過去に政権交代が実現する度に、同プランによるESG投資に係る政策が見直されてきたことを踏まえると、ESG投資規則も将来的に見直される可能性がある。
  2. 州レベルでは、ブルー・ステート(民主党寄り)で公務員年金プランによるESG投資促進策を公表する動きがある一方、レッド・ステート(共和党寄り)では同プランによるESG投資を事実上禁止する法律(反ESG投資法)を成立させる動きがある。そうした中、ESG投資へのコミットメントを明示してきたブラックロックが、一部のレッド・ステートの州政府から公務員年金プランとの取引禁止対象に指定されるような動きも出ている。
  3. 日本の年金基金にとっても、投資プロセスにおけるESG要素の考慮が加入者の最善利益に適うのか否かをめぐる米国の議論は参考になろう。日本の資産運用会社のESGファンド事業の戦略も併せて、米国における今後の展開が注目される。