ESG/SDGs

インパクト投資の国際的な潮流
-受託者責任とインパクト測定に有用な枠組み-

板津 直孝

要約

  1. 投資収益の確保に止まらず、環境的・社会的課題の解決を目指す「インパクト投資」に高い関心が寄せられている。
  2. インパクト投資は、市場競争力のある経済的リターンを生みながらも、環境や社会の課題解決を図る投資スタイル(ESG投資の一部と重なる)から、環境や社会へのポジティブな変化をより重視することで、マーケットレートよりも低い経済的リターンを許容する、一般的な寄付に近い投資スタイルまで多岐にわたる。インパクト投資には、受益者の経済的利益以外の要素を重視する投資スタイルが含まれることから、機関投資は、インパクト投資に当たって、受託者責任の観点から投資スタイルの見極めが重要となる。
  3. 投資スタイルを整理し、投資の意思決定に環境的・社会的インパクトを考慮する上で基礎となるのが、投資先が開示するサステナビリティ報告である。サステナビリティ報告に採用される枠組みは、環境的・社会的インパクトと企業の財務インパクトの焦点の当て方によって、設計思想が異なる。サステナビリティ報告は多様化してきたが、異なるインパクトの概念に従って、受託者責任の規律化において有用な「IFRSサステナビリティ開示基準」と、インパクト投資全般に有用な「EUサステナビリティ報告基準」の2つの国際的な基準に集約しつつある。
  4. 両枠組みでは基準の最終化に向けて、サステナビリティ要因ごとのインパクト測定に有用な定性的及び定量的な指標と、特定の金融セクターに対する、環境的・社会的インパクトを投資戦略へ組込む上で参考になる、開示項目と指標の策定を進めている。