ESG/SDGs

近年浮上した生物多様性ファンド設定の動き
-生物多様性関連データ整備やツール拡充が必須-

林 宏美、松永 典子(NHIサステナビリティ推進室)

要約

  1. 2022年12月に採択された、生物多様性のグローバルな目標である「昆明・モントリオール2030年目標」において、金融機関による生物多様性へのリスク、依存度、影響の評価・開示を求める目標が盛り込まれたことで、生物多様性への取り組みの本格化が期待される。
  2. 近年、相次いで設定された生物多様性や自然資本に焦点を当てたファンドを概観すると、以下の特徴が挙げられる。第一に、ファンドに組み込む銘柄を生物多様性や自然の観点による基準に絞って選定したファンドが多い点、第二に、ファンド設定前から、生物多様性の課題に取り組み、ファンド運用の素地を予め整備している点、第三に、自然資本関連の専門機関との連携である。第三の専門機関には、企業の生物多様性フットプリント(CBF)を算出するツールを提供するアイスバーグ・データ・ラボ(IDL)や金融機関用の生物多様性フットプリント(BFFI)、世界自然保護基金(WWF)等がある。
  3. 生物多様性ファンドの活用が進むためには、自然にもたらすインパクトを計測し、包括的かつ標準的な開示を可能とするツール、ならびに企業によるデータの整備が進展することが求められる。
  4. 「昆明・モントリオール2030年目標」の採択を受け、2023年は生物多様性ファンドの設定・運用をめぐる環境整備が後押しされる流れとなる可能性も出ており、今後の展開が注目される。