ESG/SDGs

健康経営がもたらす効果と市場評価の改善の好循環
-国内企業の健康経営への取り組みの現状と課題-

富永 健司

要約

  1. 昨今、企業経営において、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法である健康経営の重要性が高まっている。健康経営は、2022年6月に閣議決定された、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても人への投資に係る柱の中に位置づけられた。
  2. 健康経営を通じて、個人の生活習慣の改善が図られると共に、業務パフォーマンスを向上させる効果が期待されている。また、企業が従業員の健康増進・活力向上に取り組むことは、医療費の適正化、生産性の向上、さらに企業イメージの向上にもつながり得る。
  3. 企業による健康経営の取り組みを評価・調査する枠組みとして、企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に係る取り組みをスコアや格付で評価するESG評価や、経済産業省による健康経営度調査が挙げられる。
  4. 企業による健康経営への取り組みは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、ESG投資の観点からも注目度が高まっており、機関投資家等が従業員の健康・安全を重視する動きがでている。
  5. 高齢化が進展する日本において、企業が健康投資により従業員の健康増進・活力向上を促すことは、究極的には国民の健康寿命の延伸にもつながる社会的意義のある取り組みである。投資家の関心も高まる中、健康経営を通じた従業員のパフォーマンスや人材定着率の向上等が、市場における評価の改善につながるという好循環も期待される。