ESG/SDGs

2022年は個人投資家のESG、ESG投資への関心の高まりに一巡感
-若年層や短期志向投資家では関心が高まる-

西山 賢吾

要約

  1. 野村證券が実施した日本の個人投資家に対するESG(環境、社会、ガバナンス)、ESG投資に関するアンケート調査(2022年12月公表)の結果を見ると、『この1年でESG投資を重視するようになった』と回答割合が前回調査(2021年12月)の38.8%から36.5%に低下した。また企業のESGへの取り組みに対する質問では、「関心がある」との回答割合が前回の53.3%から47.5%に低下する一方、「関心がない」は40.6%から45.8%に上昇した。
  2. 他方、ESG投資と投資収益率に関する質問では、『投資収益率が重要なのでESG要因を考慮する必要はない』との回答割合が前回の7.2%から13.5%に上昇する一方、『投資収益率が重要ではあるが、ESG要因もある程度考慮する必要がある』との回答割合は51.2%から45.7%に、『投資収益率以上にESG要因を考慮する必要がある』も20.9%から19.2%に、それぞれ低下した。さらに、ESG関連金融商品への関心についての質問では、『ESGに関連した金融商品に関心はない』との回答割合が38.5%から40.6%に上昇した。
  3. 個人投資家のESG、ESG投資に対する関心はこれまで漸進的に高まってきたが、今回の調査結果からは一巡感がうかがえる。背景要因として、地政学上の問題やエネルギー価格の高騰などが影響した可能性が考えられる。その一方で、過去当該調査では相対的にESG、ESG投資に対する関心の低かった若年層(39歳以下)や短期志向の投資家において、ESG投資への重視度合いや企業のESG活動への関心が高まるという新しい動きも見られている。今後個人投資家へESG、ESG投資の一段の浸透を図る上では、彼らへの訴求がこれまで以上に重要であると考えられる。