ESG/SDGs

2023年度地方債計画
-世界初のグリーン共同発行地方債発行と起債運営に向けた論点-

江夏 あかね

要約

  1. 2023年度地方債計画や地方財政対策では、財政健全化の継続が示されるとともに、地域の脱炭素化の推進についても重層的に施策が掲げられた。特に、2023年度後半に10年債として発行予定である地方団体におけるグリーンボンドの共同発行は、世界初のグリーン共同発行地方債発行になる可能性がある。
  2. 2023年度の地方債市場を見据えると、国内金利の動向を含めて金融市場環境の先行きを見通すのが難しい状況が続くとみられる。このような中、2023年度の起債運営に向けた全体の論点としては、柔軟性の確保や投資家への丁寧な対応が挙げられる。グリーン共同発行地方債を含めた持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を意図した債券(SDGs債)における起債運営の論点としては、SDGs債としての主目的を軸にした資金調達がカギになり得る。
  3. 特に、SDGs債の発行に当たっては、主目的である地域課題を軸に据えた起債運営が大切と言える。投資家が着目する可能性のある論点(地域のマテリアリティ〔重要課題〕への焦点、インパクトの追求及び開示、追加性の創出)を把握し、適切に対応することが求められる。加えて、財投機関、事業会社、金融機関等の地方公共団体以外によるSDGs債にも投資している投資家からも賛同を得られるように、各発行体による持続可能な社会の実現に向けた取り組みを把握し、必要に応じて対応を行うことが重要である。