ESG/SDGs

少子高齢化が加速する中国
-日本との比較を中心に-

関 志雄

要約

  1. 中国では、一人っ子政策の実施などにより出生率が長期にわたって低下している一方で、平均寿命が延びていることを受けて、少子高齢化が進んでいる。日本は中国より一歩先に少子高齢化の段階に入っており、2020年の中国の人口の年齢構成は1990年前後の日本に近い。日本の経験が示しているように、少子高齢化は労働力の減少と貯蓄率(引いては投資率)の低下を通じて成長率を抑える要因となる。成長率を維持するためには、出生率と労働参加率に加え、生産性を高めることが求められる。
  2. 出生率と労働参加率の向上について、日本は出産奨励や、定年延長、そして女性の雇用促進に努めてきた。その中で、出産奨励は出生率の低下に歯止めをかけるに至っていないが、女性の雇用促進と定年延長は一定の効果を上げている。一方、中国では女性の労働参加率がすでに高く、それ以上上昇する余地が限られており、産児制限の緩和と定年延長が労働力不足を解消するための最も重要な政策手段となる。
  3. 生産性の向上については、イノベーションの加速と産業の高度化がカギとなるが、日本の場合、構造改革が挫折した結果、経済の低迷は長引いている。日本の轍を踏まないために、中国は更なる改革開放を進め、民営企業の活力を生かすと同時に、海外からの技術導入を通じて、後発の優位性を発揮しなければならない。