特集2:新展開を目指す中国資本市場
経済分野で更なる改革の推進を目指す中国共産党の指針公表
-3中全会での11年ぶりとなる改革プランの決定-
関根 栄一
要約
- 中国共産党は、2024年7月15日から18日の4日間、第20期中央委員会第3回全体会議(第20期3中全会)を開催し、「改革の更なる全面的深化、中国式現代化の推進に関する中共中央の決定」を採択し、21日に全文を公表した。同決定は、三期目に入った習近平指導部が、2027年秋開催予定の第21回党大会を越え、建国80周年に当たる2029年までの5年間で実現することを目標に設定した改革プランである。
- 第20期3中全会の改革プランは、計15分野(計60条)から構成される。2番目の「高水準の社会主義市場経済体制の確立」では、11年前の2013年11月の第18期3中全会の改革プランと比べて、市場メカニズムの活用についての表現が変更され、市場の秩序維持や市場の失敗への補完が明記され、行政による直接関与も選択肢として明記されている。
- 資本市場改革については、改革プランの第18条で、金融仲介における直接金融の役割を高めるとした上で、投資と融資(資金調達)が調和した資本市場の機能を強化するとしている。同時に、「新たな質の高い生産力」の発展推進では、VC等の投資を促進する方針である。資本市場の機能活用に当たっては、株価維持政策(PKO)の一環として、2023年夏以降行われている新規株式公開(IPO)・増資ペース規制の早期解除が不可欠である。
- 改革プランでは、不動産、地方債務、中小金融機関に関わる三大リスクの一体処理方針の継続も確認されている。他に、財政・税制改革での地方政府の財源強化、不動産開発融資モデル改革が提起されていることも注視される。
- 改革プランには、民生面で、所得分配、就業政策、社会保障、医療・衛生、人口政策といった、人々が生まれてから老後を迎えるまでの生活設計に直結する項目が盛り込まれている。中でも法定退職年齢の引き上げは、企業と協力しながら、退職後の生活に備えた資産形成の促進を資本市場の改革とセットで行うことで実現しやすくなる面もあろう。資本市場改革の議論の過程では、中国の当局や金融機関から海外の事例や経験も参照される可能性があろう。