アセットマネジメント
欧州最大のファンド・センターとして君臨するルクセンブルクの取り組み
関田 智也
要約
- 欧州では、資産運用業に強みを持つ国際金融センターとして、ルクセンブルクが大きな存在感を有している。ルクセンブルクは、欧州で最大のファンド本籍地(ファンド・センター)であり、欧州以外の地域を含めた世界全体で見ても、米国に次ぐ第2位となっている。
- ルクセンブルクのファンド・センターとしての特徴は、先進的な規制の整備により海外からのファンド誘致に成功していることである。これを実現させた要因として、ルクセンブルクが汎EUの公募ファンド(UCITSファンド)を巡る規制環境の整備で先行者利益を享受したことの他、同国が(1)柔軟な規制環境の整備、(2)資産運用業界の潮流やニーズの制度への反映、を行ってきたことが指摘できる。後者につき、ルクセンブルクが金融危機後に創設した2つの官民パートナーシップ組織が大きな役割を果たしている。
- ルクセンブルク政府は2023年、ファンド規制の近代化を企図した改革を実施した。こうした後押しもあり、近年、米国のプライベート・エクイティ(PE)ファームは、米国外でのオルタナティブ投資の販路拡大のために、ルクセンブルクを選択している。
- ルクセンブルクは、ミドル・バックオフィス業務や資産管理(カストディ)業務のサービスを提供する事業者の集積地としての特徴も有しており、ルクセンブルクに所在するファンド・マネジメント・カンパニーのサービス提供事業者は、海外/新興運用会社に対して、運用以外の業務を包括的に提供している。
- 日本では、資産運用立国実現プランを通じて、資産運用業への国内外からの新規参入と競争の促進が図られている。この目的を実現していくにあたり、ルクセンブルクの官民パートナーシップ組織やファンド・マネジメント・カンパニーの事例は参考になろう。