中国・アジア
5年ぶりに開催された中国・中央金融工作会議の概要と金融リスクの発生防止・解消に向けた動き
関根 栄一
要約
- 2023年10月30日・31日、5年ぶりに中央金融工作会議が開催された。同会議は、2023年2月から3月に決定された中国共産党中央による金融分野への集中的・統一的指導体制を受け、開催主体が国務院(内閣)から党に、併せて会議の名称もそれぞれ変更された。同会議と前後して、党中央の金融分野の人事も固まり、党中央のトップダウン型指導体制が始動した。
- 中央金融工作会議の内容を見ると、まず、当面及び今後の一定期間において、システミックリスクの発生防止を最低ラインとした上で、金融分野の質の高い発展に向け、実体経済の資金調達構造の最適化、資本市場機能の活用、5大分野(フィンテック、グリーン金融、金融包摂、年金金融、デジタル金融)での効率性向上を進めていくとした。
- 同会議終了直後には、金融当局から、民間企業への金融サービスの目標値の設定を含む支援策が公表されている。不動産業では、開発業者の合理的な資金需要を満たす等の指針が繰り返される一方、市場関係者からは、不動産企業の連鎖破綻の回避策と住宅在庫の本格的解消に向けた措置について注視されている。また、中小金融機関の吸収合併や解散など、金融リスクの解消に向けた動きも出始めた一方、資本市場の対外開放策を使って、上海の自由貿易試験区で資産証券化商品の人民元建てクロスボーダー譲渡を展開する動きも出ている。
- 更に、同会議終了後の12月11日・12日に開催された党中央・国務院による中央経済工作会議では、不動産、地方債務、中小金融機関に関わるリスクを「三位一体」としてとらえ、トップダウンで総合的に解消していく方針が確認された。金融当局各トップの発言を見ると、地方債務のうち、融資平台公司を経由した隠れ債務については、合併・再編、資産注入等の方法を通じて、資金調達機能を段階的に切り離すとしている。中小金融機関のリスク解消に向けては、省別・金融機関別・企業別にきめ細かく処理プランを策定するとしている。
- 今後のリスク解消プランは、中央の指針を受け、党の地方金融委員会等が主導して策定していくことになろう。その過程で、世界各国の過去の経験や知見も参照される可能性もあろう。