中国・アジア
中国資本市場の「質」を重視した改革指針の公表
-10年ぶり3回目となる国務院9条意見の概要-
関根 栄一
要約
- 2024年4月12日、中国国務院(内閣)は、「資本市場の管理監督強化、リスク予防及び質の高い発展促進に関する若干の意見」(2024年版9条意見)を公表した。同意見は、2004年及び2014年に続く、10年ぶり3回目の中国資本市場の改革に関する指針となる。併せて、同年2月に交代した中国証券監督管理委員会の呉清・新主席による初めての資本市場に関する指針でもある。
- 2024年版9条意見は、第1条の総論、第2条の株式発行・上場審査基準の厳格化、第3条の上場後の管理監督の厳格化、第4条の上場廃止制度改革の推進、第5条の証券・基金管理会社への管理監督強化、第6条の証券売買への管理監督強化、第7条の中長期資金の市場参画促進、第8条の改革開放の全面的推進、第9条の資本市場の質の高い発展の推進、の計9条から構成される。
- 2024年版意見は、質の高い経済発展に合わせて、資本市場でも質の高い発展を目指すとしているほか、今後5年間、2035年、21世紀半ばと、三つの時間軸を設定して実現すべき目標を分けていることも特徴である。
- 2024年版意見に基づき、「1+N」という形で、同意見に関連する規定、規則などが既に40本近く公表されている。株式発行市場では上場会社の選別が続き、株式流通市場ではプログラム取引への監視が続く見通しである。投資家層の育成では、投資資金の市場での長期運用を目指す一方、家計金融資産のうち2022年末時点で6割強に上昇した現預金の市場運用を促す仕組みの構築も課題である。
- 対外開放では、香港との間でストックコネクトの対象ETF商品の拡大が具体化している。ゼロコロナ政策期間終了以降も低迷中のエクイティファイナンスでは、中国企業の海外上場志向が出ている。科学技術金融、グリーン金融、金融包摂、年金金融、デジタル金融の五大分野の証券業での進め方も注視される。