特集2:アセットオーナー改革への示唆

ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資産運用戦略及び助成活動
-日本に求められるアセットオーナー改革への示唆-

岡田 功太、船津 太佑

要約

  1. 岸田文雄首相は2023年10月2日に、「受益者に適切な運用の成果をもたらすよう、アセットオーナーに求められる役割を明確化したアセットオーナー・プリンシプルを、来年夏を目途に策定」すると述べた。アセットオーナーとは、資金の運用等を受託し自ら企業等に投資を行う資産運用会社に対して、当該資金を出す資産保有者のことであり、年金基金、保険会社、大学基金、財団、美術館、博物館などが含まれる。
  2. 米国では、アセットオーナーの多くが積極的な資産運用を行っている。米国の財団の中でも最大の資産規模を有するビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ビル・ゲイツ氏、メリンダ・フレンチ・ゲイツ氏、ウォーレン・バフェット氏から寄付を受け入れ、助成活動に必要な財政的資源を確保すべく、ビル・ゲイツ氏の資産管理会社カスケードから投資助言を受けて多様な資産への分散投資を行っている。
  3. 日本の財団の多くは、預貯金・債券に偏重したポートフォリオを構築しているが、今後は助成活動に必要な財政的資源を確保すべく、専門の資産運用会社等から投資助言を受け、多様な資産に分散投資を行う必要があろう。また、今後策定されるアセットオーナー・プリンシプルにおいては、アセットオーナーの運用高度化を図るべく、分散投資義務等を規定することを検討してもよいのではないだろうか。