特集2:アセットオーナー改革への示唆

ノルウェー政府年金基金グローバルによるアクティブ運用と開示を巡る取り組み

関田 智也

要約

  1. 岸田文雄首相は2023年10月、「アセットオーナー・プリンシプル」を2024年夏を目途に作成し、その中で、最善の利益をもたらす資産運用会社の選択や、ステークホルダー等への運用内容の見える化などを求めるとしている。これらの論点に関して、ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG)が先進的な取り組みを進めている。
  2. GPFGは、株式ポートフォリオの外部委託運用について、将来良好なリターンを生み出すマネージャーを発掘すべく、アクティブ・サーチと呼ばれる独自のプロセスを活用している。具体的には、幅広い情報ソースに基づき、トラックレコードではなく、良好なリターンを生み出すマネージャーが備える共通の特性を重視した外部委託先の選定を行っている。
  3. また、GPFGは、最終受益者たるノルウェー国民をはじめ、投資先企業などを含む幅広いステークホルダーの信頼を得るため、透明性の向上を図っている。具体的には、パフォーマンスやコストを巡る開示強化のほか、議決権行使状況の詳細などを開示している。
  4. こうした取り組みを通じて、GPFGは幅広いステークホルダーの信頼を勝ち取ることに成功している。日本におけるアセットオーナー・プリンシプルの策定プロセスで議論されるとみられる論点につき、一つのモデルケースになるものと言えよう。