特集3:中銀デジタル通貨(CBDC)の進展
デジタルユーロ導入に向けたEUの動向
関田 智也
要約
- 世界各国で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入の検討が進んでいる。CBDCとは(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されていること、の3つを満たすものである。CBDCは、金融機関間の決済目的に発行されるホールセールCBDCと、企業や個人の決済にも利用可能なリテールCBDCに分類される。
- 欧州連合(EU)は、リテールCBDC導入に向けた取り組みを進めている。欧州中央銀行(ECB)は2023年10月、ユーロ圏におけるリテールCBDCであるデジタルユーロの導入プロセスを「準備フェーズ」へ移行させることを決定した。また、欧州委員会は2023年6月、デジタルユーロの法的枠組みを整備すべく、法案パッケージを公表した。デジタルユーロ導入を見据えた法整備が動き出したことは、EUが主要先進国におけるリテールCBDC導入の動きで一歩リードしている証左と言えよう。
- 一方で、デジタルユーロ導入の意義や備えるべき主要な特性に関して、EUにおけるコンセンサスは未だ形成されておらず、デジタルユーロの導入が既定路線になっているとも言い難い。目先は、デジタルユーロ導入を正式に決定するための必要条件と位置付けられる法案パッケージの採択に向けた動きが注目されよう。
- 日本においては、技術面における実証への取り組みを続ける傍ら、将来の決済システムのあり方、及びCBDCが果たし得る役割につき、EUを含む他の法域との共通点・相違点を踏まえながら議論を深めていくことが求められるだろう。