金融・証券規制

中国における社債市場の改革
-管理監督の一元化と発行登録制の深化-

宋 良也

要約

  1. 中国の社債市場(公司債・企業債)は、管理監督体制・発行取引市場ともに分断されている。こうした状況は、発行体・投資家に混乱を招くだけでなく、社債市場の価格形成に歪みをもたらすリスクもあると指摘されてきた。
  2. そこで中国政府は、社債市場の一元化に向けた施策を打ち出し、多様な発行体が資金調達しやすい社債市場の構築を目指してきた。直近の施策として、企業債の監督権限を証券監督管理委員会(証監会)に移管したことや、2020年から始まった債券発行登録制の深化に関する規則改正が挙げられる。
  3. 前者の移管措置は、企業債を公司債の管理監督と同じフレームワークの下に置くことで、社債の管理監督体制を一元化する動きとなっている。後者の発行登録制の深化は、情報開示の強化や審査・登録プロセスの効率化等を図るものであり、市場メカニズムが働く社債市場の構築を目指している。
  4. これらの施策により、中国の社債市場に、より多くの発行体が参入することが期待される。ただし、企業債については未だ銀行間債券市場と取引所市場を跨る取引が可能であり、社債市場の一元化は未完成と言えよう。また、将来的には、社債市場による民営企業の資金調達を支援する政策も講じられる可能性がある。中国における社債市場が今後どのように発展していくのか、注目される。