アセットマネジメント

米国401(k)プランで普及するCIT型のターゲット・デート・ファンド

岡田 功太、中村 美江奈

要約

  1. 岸田政権は2023年12月に、資産運用立国実現プランを公表した。同プランは、家計が老後の資産形成を行う上で重要な役割を果たす企業型の確定拠出年金(DC)の課題を指摘した。すなわち、企業型DC加入者は、インフレリスクを十分に考慮して運用する必要があるが、同加入者の約3割が元本確保型商品のみで運用していることを踏まえると、適切な商品選択が行われているとは言い難いという指摘である。
  2. 米国の401(k)プランでは、ターゲット・デート・ファンド(TDF)が主要な投資対象として拡大している。米国のTDFは、ミューチュアル・ファンド型で組成されることが多かったが、足元では、コレクティブ・インベストメント・トラスト(CIT)型へシフトしている。CITとは、銀行が運営する退職プラン加入者向けのファンド形態の一種であり、ミューチュアル・ファンドよりも経費率が低くなる傾向がある。
  3. 米国のリタイアメント業界を取り巻く環境は、伝統的なミューチュアル・ファンド中心の市場から、CITを中心とした市場に変わろうとしており、TDFへのシフトは象徴的な事象といえる。バンガードなどの大手資産運用会社はCIT型TDFを提供し、市場を席巻し始めている。
  4. 米国においては、401(k)におけるファンド形態も含めた創意工夫が、資産運用業界の進化や家計の資産形成の促進を支えている。CIT型TDFを巡る動向は、特色ある運用商品の多様化などを通じて、資産運用業の高度化を目指す日本にとって示唆に富むものであるといえよう。