ESG/SDGs
2024年の改革プランで再確認された中国の脱炭素化の動向
-「3060目標」実現に向けトランジションを重視-
関根 栄一、宋 良也
要約
- 中国では、2060年に二酸化炭素(CO2)の排出と吸収をプラスマイナスゼロにする「カーボンニュートラル」と、そのため2030年にCO2排出量をピークに到達させる「カーボンピークアウト」に向けたCO2排出削減の取り組みを「3060目標」と呼び、産業、環境、金融(分野)等の各政策を担当する政府当局が支援策を打ち出してきた。
- 2024年に入ると、7月の中国共産党・第20期中央委員会第3回全体会議(第20期3中全会)での改革プランにおいて、「3060目標」が再度確認され、グリーン分野に加え、「グリーン・トランジション」にも注力するという当局の姿勢が明確にされた。続いて8月、中国共産党・国務院(内閣)は「経済・社会の全面的なグリーン・トランジション加速に関する意見」を公表し、2030年と2035年までのトランジション目標を設定した。また、中国人民銀行を含む政府7部門は、先行して金融分野での移行支援に関する指導意見を公表している。
- 「3060目標」の実現に向け、金融分野の各業界はグリーン関連の取り組みに既に着手している。代表的事例として、中国人民銀行はカーボン排出削減支援ファシリティを設定しその利用期間を延長するとともに、石炭のクリーン・高効率の利用を支援するための金融機関向け再貸出枠を設けている。2021年に創設された全国統一の炭素排出権取引市場の整備継続や、地方政府によるトランジション・タクソノミーの制定といった取り組みも挙げられる。
- 今後、中国の「3060目標」の実現に向けて、2025年、2030年、2035年という鍵となる年の目標がどのように達成されるのかが注視される。加えて、世界で徐々に始まっている「グリーンエクイティ」に向けた中国での試みや、全国レベルのトランジション・タクソノミーの制定等の動きが、注目される。