ESG/SDGs
株価上昇期における個人投資家のESG、ESG投資への関心
-関心の戻りの中でESGと投資収益のバランス重視志向強まる-
西山 賢吾
要約
- 野村證券が実施した日本の個人投資家に対するESG(環境、社会、ガバナンス)、ESG投資に関するアンケート調査(2024年3月公表)の結果を見ると、「企業のESGへの取り組みに対する関心」については、2022年12月調査で低下した「関心がある」との回答割合が上昇に転じた。
- 「株式市場におけるESG要因の考慮の必要性」については、「投資収益率が重要ではあるが、ESG要因もある程度考慮する必要がある」との回答割合が過半を超えており、両者のバランスを重視する志向が強まった。一方、「ESGに関連した金融商品への関心」については、6割弱が「関心はない」と回答した。また、「関心がある」との回答者の中では「環境に配慮した企業に積極投資をする投資信託」への関心が最も高かった。
- 今回調査の回答を年代別にみると、若年層(39歳以下)と高年層(60歳以上)ではESGやESG投資に対する関心が比較的高い一方、40代、50代といった中年層の関心は相対的に低く見える。また、投資方針別にみると、配当、株主優待重視の個人投資家は、長期志向や短期志向の個人投資家に比べ関心が低いように見受けられる。
- 2022年12月調査はESG、ESG投資に対する関心に一巡感が示唆される内容であったが、今回の調査からは関心が戻りつつあるように見える。また、ESG要素の考慮と投資収益とのバランスを重視する傾向が強まる一方、ESG関連金融商品に関心がないとの回答が過半を超えていることや、40代、50代でのESG、ESG投資への関心が相対的に低いように見受けられるといった点は、個人投資家の金融資産への投資促進を図る上での課題といえるであろう。