特集1:サイバーセキュリティに関する諸論点
金融資本市場における当局・金融機関によるサイバーリスクへの対処
門倉 朋美、江夏 あかね
要約
- 金融機関は大量の機密情報や取引を取り扱うことから、サイバー攻撃の標的になることが多いと指摘されている。金融資本市場、特に証券市場は資金の効率的な配分や利用を促す機能を担っており、特定の市場や証券会社等の金融機関に対するサイバー攻撃の被害は甚大になり得ることが想定される。
- 金融セクターの国際的な枠組みにおいては、金融安定理事会(FSB)や証券監督者国際機構(IOSCO)等が各国の金融当局や金融機関等を対象としたサイバー・レジリエンスの強化を図る施策を推進している。
- 一方、各国金融当局は自国の金融機関に対してサイバーセキュリティの確保に資する取り組みを推進している。日米金融当局による近年の主な施策として、米国証券取引委員会(SEC)による証券市場関連組織に対する規制強化と日本の金融庁による金融機関に対するセルフアセスメントの促進が挙げられる。
- 今後、日本の金融資本市場や金融機関がサイバーリスクの脅威に対応し、健全な発展を遂げるためには、(1)海外当局の動向の把握、(2)金融機関のサイバーセキュリティリスク評価の普及、が重要になると考えられる。