特集1:サイバーセキュリティに関する諸論点

重要性が高まるサイバーセキュリティに関する金融商品の役割

富永 健司

要約

  1. 近年、サイバー攻撃の被害が深刻化し、多様化している。企業及び投資家がサイバーセキュリティのリスクに対応し、関連する機会を捉えていくにあたり、金融商品の役割の重要性が増している。金融資本市場における、サイバーセキュリティ関連の主要な金融商品として、サイバーファンド、サイバー保険が挙げられる。
  2. 米国では2014年に世界初のサイバーファンドであるピュアファンズISEサイバーセキュリティ上場投資信託が上場された。日本においても、サイバーセキュリティ関連の投資信託が提供されているが、米国におけるサイバーファンド同様、投資先企業は米企業が中心となっている。また、兼松等が2024年2月に設立を発表したサイバーファンドは、国内のサイバーセキュリティ関連企業を主要な投資対象として想定していると見られ、こうした取り組みが日本企業全体のサイバーセキュリティ対策の強化に寄与していくのか注目される。
  3. 他方、サイバー保険に関しては、米国で利用が浸透しているのに比べ、日本では依然として普及余地があると見られている。サイバー保険の加入率向上に向けて、サイバーセキュリティに対する意識向上、サイバー保険の認知度向上等の課題に取り組んでいくことが重要である。
  4. 今後、(1)サイバーセキュリティに係る金融商品の開発努力、(2)官民の連携強化による技術革新へのファイナンス支援、等に取り組んでいくことで、サイバーセキュリティに関する金融商品のさらなる発展が期待される。

リサーチポータルに会員登録していただくと、全文をデジタルブックで無料で閲覧いただけます。