特集2:日中におけるサステナビリティ情報開示
日本におけるサステナビリティ開示基準案の公表
-IFRSサステナビリティ開示基準を基礎とするSSBJ-
板津 直孝
要約
- サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2024年3月、日本におけるサステナビリティ開示基準の公開草案を公表した。同公開草案は、プライム上場企業における有価証券報告書での開示を想定する。同公開草案に基づく非財務情報は、国際財務報告基準(IFRS)のほかに、日本会計基準や米国会計基準及び修正IFRSに基づいて作成された財務諸表に対しても、補完することができるとしている。公開草案の最終化後、金融庁が法定開示への適用を検討する予定であるが、日本の基準の位置付けが明確になったことを踏まえ、投資家及びグローバル企業は、先行する欧米の開示要請との違いを整理することが重要となる。
- 公開草案の基準構成や開示要件は、概ねIFRSサステナビリティ開示基準と同様であるが、日本の法令等を踏まえた公開草案独自の規定を定めている。独自に追加した開示は、IFRS サステナビリティ開示基準に基づく開示情報作成の過程で入手する情報の範囲内で、作成可能なものに限定されている。
- 公開草案は、情報利用者として投資家を想定し、財務上の重要性を概念としている。連結子会社などからの温室効果ガス(GHG)排出量の開示では、財務会計で用いられている連結基準と同じ基準を適用することが、GHGプロトコルが推奨する排出量報告の目的適合性を満たすことになる。現行のIFRSなどの連結基準を踏まえると、経済的実質を優先して適用する持分割合アプローチが相当すると言える。
- ただし、公開草案ではアプローチの選択適用を認めている。そのため、選択したアプローチが連結財務諸表に含まれる事業体の範囲と異なる場合は、排出量の測定と財務会計との結合性、さらには連結財務諸表との整合性と比較可能性も損なわれる懸念に、留意する必要がある。