ESG/SDGs
「踊り場」から、「高度化」「多様化」を伴う「安定成長」へ
-日本のサステナブル投資残高(2023年)-
西山 賢吾
要約
- NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が公表した2023年の日本のサステナブル投資残高は、537.6兆円となった。2022年は前年比で減少に転じ、これまで順調だったサステナブル投資が踊り場を迎えた印象であった。しかし、2023年は2022年に比べ8.9%増と再び上昇に転じ、日本におけるサステナブル投資への関心は引き続き高いことが示された。
- 運用手法別にみると、国際規範に基づくスクリーニングは前年比で減少したが、他の運用手法は前年を上回った。運用残高の大きなESGインテグレーションで前年比9%増と安定して増加したほか、ネガティブ・スクリーニングやエンゲージメントも前年比2桁の増加となった。また、規模は小さいものの、インパクト投資が2022年に比べ約3.3倍に拡大したことが目を引いた。
- 運用資産別にみると、すべての資産クラスで残高は前年を上回った。最も伸び率が高かったのはプライベートエクイティの53.1%増であり、これに不動産(28.1%増)、債券(26.0%増)が続いた。一方、外国株式は0.5%増とほぼ横ばいであったが、米国など海外株式市場の状況や円安などを勘案すれば、海外への投資も着実に増加したとJSIFでは分析している。
- 日本の投資活動においてESG(環境、社会、ガバナンス)の重要性と関心は引き続き高い状況である。一方、サステナブル投資残高がほぼ日本のGDP(国内総生産)額に匹敵するまでに拡大したことや、いわゆる「ウオッシュ」の問題、情報開示の厳格化、海外のサステナブル投資の動向などもあわせて勘案すると、日本のサステナブル投資は以前ほどの高成長は見込みにくいものの、内容の高度化や多様化を伴いつつ、踊り場から安定成長のフェーズに入ると考えられる。