特集3:地方債の新展開

2024年度地方債計画
-「金利がある世界」での起債運営の論点-

江夏 あかね

要約

  1. 2024年度地方債計画及び地方財政対策は、前年度に引き続き、一般財源が確保され、臨時財政対策債の発行予定額が減少する等、地方財政の安定性が維持される内容だった。また、こども・子育て、地域脱炭素、消防・防災力の一層の強化といった持続可能な社会の実現に資する施策も示された。その一方で、地方財政対策上で公債費への影響は未だ顕在化していないものの、予算積算金利が17年ぶりに引き上げられるなどの動きもあった。
  2. 2024年度の地方債市場は、起債、投資ともにタイミングを見極めるのが難しい状況が継続すると想定される。同時に、「金利がある世界」での起債運営のあり方を考えるタイミングに差し掛かっている。
  3. 「金利がある世界」の地方財政の姿について地方債残高の借入金利水準及び年間発行額に関する統計をもとに粗い試算を行った。その結果、仮に金利が上昇しても、急騰するような状況でない限り、1年以内など直ちに地方財政の安定性を脅かすことはないと考えられるが、起債運営において従来以上に工夫が求められることが示唆された。
  4. 「金利がある世界」で起債運営を行う上でのポイントとして、(1)調達年限の長期化と償還スケジュールの平準化、(2)起債タイミングの分散化、(3)様々な商品性への着目、が挙げられる。