ESG/SDGs

世界のサステナブル投資残高(2022年)
-米と他地域のESGを巡る動きの違いが顕現化-

西山 賢吾

要約

  1. 2022年(2021年12月現在、日本は2022年3月末現在)の世界のサステナブル投資残高は30.32兆ドルとなり、前回2020年(2019年12月、日本は2020年3月末現在)の35.30兆ドルから14.1%減少した。地域別にみると、米国が2020年比51%減となった。いわゆる「反ESG」の動きもあるだろうが、サステナブル投資手法における定義の厳格化など調査手法の変更も相応に影響したと考えられる。一方、米国を除いた地域ベースでは残高が2020年比20%増となり、ESG(環境・社会・ガバナンス)を巡る動きの違いが統計上にもはっきり表れた。
  2. 投資手法別の残高をみると、エンゲージメント/株主行動が最も多く、これに、ESGインテグレーションやネガティブ/排他性スクリーニングが続き、これら3手法で全体の85%を占める。一方、インパクト/コミュニティ投資やサステナビリティ・テーマ投資の残高はこれらに比べ非常に小さく、2つ併せても3%程度にとどまる。
  3. サステナブル投資に対する関心は継続的に高まっているが、いわゆる「グリーンウォッシュ」や「ESGウォッシュ」への対応からその定義や投資手法が厳格化するなど、サステナブル投資を巡る環境は日々変化している。見せかけだけの「ウォッシュ」ではなく、発行者(資金調達者)や投資家をはじめとしたステークホルダーの満足度が高く、品質の高いサステナブル投資の運用体制や関連する金融商品に対するニーズが高まる中、これらへの対応の巧拙が運用機関や国・地域レベルにおける同投資への意識や取り組みの「差」として今後一段と明確になると考えられる。