ESG/SDGs

バーゼル委員会による気候関連金融リスク開示の提案
-第三の柱の下での銀行固有の開示-

小立 敬

要約

  1. バーゼル委員会は2023年11月29日、気候関連金融リスクの開示に関する市中協議文書を公表した。これは、第三の柱という銀行固有の開示の枠組みの中で気候関連金融リスクの開示を求めるものである。市中協議文書は、第三の柱に関する初期的作業と予備的提案を市中協議に諮るものとする一方、2024年には最終化させ、2026年から適用することを目指すとしている。
  2. 市中協議文書は、銀行勘定における気候関連金融リスクについて定性的開示と定量的開示を提案する。定性的開示に関しては、気候関連金融リスクに関する銀行のガバナンス、戦略、リスク管理および集中リスクについて開示を求めることが提案されている。
  3. 定量的開示については、移行リスクとしてセクター別エクスポージャーと投融資に関わる温室効果ガス(GHG)排出量であるファイナンスド・エミッション、物理的リスクとして地域別エクスポージャーについて共通に開示を求めることを検討している。また、各法域の裁量の下で開示を要求するものとして、(1)エネルギー効率レベル別のモーゲージ・ポートフォリオの不動産エクスポージャー、(2)物理的産出量当たり排出原単位、(3)資本市場業務や金融アドバイザリー業務に係るファシリテーテッド・エミッションが提案されている。
  4. 市中協議文書が最終化されれば、銀行はカウンターパーティからGHG排出量に関する情報を入手したりする作業が必要になってくるだろう。また、気候関連金融リスク管理のための体制整備も一段と求められる。気候関連金融リスクへの対応は日進月歩で進展していくことが予想される。気候関連金融リスクに関する第三の柱の整備とともに、気候関連金融リスクの管理・監督の枠組みに関しても引き続きフォローアップが必要であろう。