ESG/SDGs

初めて公表されたTNFD早期採用者のリスト
-国別内訳で日本が首位-

林 宏美

要約

  1. 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、2024年1月16日、TNFD提言(v1.0)に則した開示準備を進める意向をウェブサイトに登録した、TNFD早期採用者(TNFD Early Adopters)のリストを公表した。46か国の320組織で構成される同リストには、日本の企業等や金融機関が全体の4分の1に相当する80社含まれており、国別内訳で首位になった。
  2. TNFD早期採用者として登録するには、基本的に同組織が発行する財務報告と同じタイミングで、TNFD提言に則した開示を行うことが求められる。なお、TNFDに登録する際、TNFD提言に則した開示を開始する会計年度が2024年度以前か、或いは2025年度であるのか、いずれかを必ず選択することが求められる。
  3. TNFD早期採用者の地域別内訳を見ると、136社の欧州と134社のアジア・太平洋地域がほぼ肩を並べ、両者で全体の約85%を占めるなど、地理的分布に偏りがある。日本の非金融企業等のTNFD早期採用者が属する主なセクターは、食品・飲料が同13.8%と最大シェアを占めていたほか、インフラストラクチャーおよび運輸(同各12.5%)、テクノロジー・コミュニケーション(同11.3%)である。世界の分布では5.6%にとどまる運輸セクターのシェアが高い特徴が見られる。
  4. TNFD早期採用者リストは、自然関連財務開示に積極的なスタンスである企業等で構成されていると捉えられる一方、自然関連課題に関する開示をかねてから手掛けている企業でも同リストに含まれない場合もあり、網羅されているわけではない点にも留意する必要がある。