ESG/SDGs

発行体がインパクトの包括的管理にコミットするインパクトボンド

江夏 あかね

要約

  1. サステナブルファイナンス市場では近年、発行体自らが包括的にインパクトを捉えて管理する金融商品として、「インパクトボンド」の事例が出現し始めている。インパクトボンドは、金融資本市場に浸透している国際資本市場協会(ICMA)による原則(ICMA原則)に加えて、国際連合環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)による「ポジティブ・インパクト金融原則」(PIF原則)を用いて発行枠組み(フレームワーク)を策定することが特徴の1つである。
  2. 本稿では、インパクトボンドに関して、フランスのソシエテ・ジェネラル(SG)とALDオートモーティブ(ALD)に加え、日本の豊田合成の事例を概観した。PIF原則とICMA原則の併用を通じて、発行体が包括的にポジティブ/ネガティブ・インパクトを把握、管理しているという共通点の下、各社の取り巻く状況に応じてフレームワークを構築し、ファイナンスを位置づけていることが明らかになった。
  3. SGは、インパクトボンドの発行を2015年に開始し、様々な商品形態での起債に取り組んでいる。ALDは、初回債発行時、フレームワークについて気候債券イニシアティブ(CBI)の認証を取得する形で臨んだ。豊田合成は、同社全体の重要課題(マテリアリティ)からインパクトを丁寧かつ包括的に分析して、フレームワークを構築した。
  4. インパクトボンドが今後、金融資本市場に浸透していく上での主な注目点としては、(1)インパクトボンドを通じた価値創造の可視化、(2)インパクト・ウォッシュの回避、が挙げられる。