ESG/SDGs

2023年6月株主総会議決権行使結果と2024年以降の注目点
-投資家の意思が経営トップ取締役選任議案と株主提案に明示-

西山 賢吾

要約

  1. 2023年6月の株主総会においては、社内取締役の平均賛成率が前年を下回った。経営トップ(会長、社長)の取締役選任議案賛成率が60%台や70%台になった事例をみると、不祥事や政策保有株式を過大に保有している企業が相対的に多かった。その一方、女性役員(ないしは取締役)の不存在や独立社外取締役の人数不足を理由としたものは相対的に少なく、企業側での対応が進んだことがうかがわれる。
  2. 株主提案においては、環境関連団体や、彼らと機関投資家の共同提案による環境関連の株主提案に対する賛成率は伸び悩んだように見える。その一方、アクティビストからの資本政策やコーポレートアクションを求める株主提案の中には、これまでの同種の提案に比べ高い賛成率を得たものも見られた。
  3. 野村證券のアンケート調査による個人投資家の議決権行使動向をみると、議決権を行使した割合が上昇した一方、株主総会(会社側提案)議案の「全てに賛成」した割合は低下した。個人投資家の企業経営や企業価値に対する関心が高まってきた可能性が考えられる。
  4. 機関投資家による2024年以降の議決権行使基準における注目点としては、(1)女性役員(ないしは取締役)の増員(最低1人から複数、取締役員数の10%以上など)、(2)社外取締役の増員(3分の1以上から過半へ)、(3)「エンゲージメントとエスカレーション」に対応するための議決権行使基準の見直しや考え方の整理、(4)有事導入型買収防衛策に対する議決権行使の考え方の整理、などが挙げられるであろう。それとともに、議決権行使を活かしながら、持続的な企業価値向上に向けた企業と株主との対話が一段と深化することにも期待したい。